反応管 メタノール平衡圧ビューア ― 仕様書

用途:密閉反応管(等容系)内の純メタノールの平衡圧と相状態を、温度・充填量・容器体積から算出・可視化する単一HTML。
版:grid v1 / 作成 2026-06-17 / 更新 2026-06-19(温度上限400℃拡張) / 公開 reactor-methanol-pressure.vercel.app / 姉妹:水版 / 水–メタ混合版 / ヘキサン版

1. 実装方式(裏側)

裏側は、メタノールの参照状態方程式(de Reuck & Craven 1993)をオープンソースの計算ライブラリ(CoolProp)で事前に計算して早見表にした後、それをHTMLに埋め込んでブラウザ上で補間表示しています。重い物理計算は「作るとき」に一度だけ済ませ、「使うとき」は表を引く(補間する)だけなので軽い。計算サーバーは不要でブラウザ内だけで完結します。

段階処理使用
① 事前計算温度×密度の多数の組合せで圧力・相を計算し早見表(JSON)化Python + CoolProp(メタノールHEOS)
② 埋め込み早見表+描画+表示プログラムを単一HTMLに同梱build.py
③ 表示スライダー入力に対し早見表を補間して即時表示(計算なし)JavaScript / Plotly.js

2. 早見表(事前計算グリッド)

早見表は 温度 410点前後 × 密度 430 点 = 約 17.6万点 の圧力値と、各温度の飽和テーブル(飽和蒸気圧・飽和液/蒸気密度)・臨界点ノットから成る。手計算の物性表が数十点なのに対し、本ツールは約17.6万点を事前計算して保持しているため、補間の根拠が密で信頼性が高い(臨界点直下は温度刻みを0.1℃に細密化)。347℃超の格子点は参照式の妥当範囲外(外挿・参考値)。

早見表の中身(抜粋)— 単相圧 P_single [MPa]

T\ρ (kg/m³)50200500786
100 ℃0.3540.3540.35473.43
200 ℃3.9424.0274.027186.5
300 ℃6.09814.7237.48321.9
340 ℃6.75618.8554.08382.4
360 ℃ ※外挿7.0620.8662.41—
400 ℃ ※外挿7.6224.7578.98—

読み方:100℃で ρ=50/200/500 が同一圧力なのは気液二相域(圧力=飽和蒸気圧 P_sat(T) で、密度=充填量によらず温度のみ)。200℃で ρ=50 だけ僅かに低い(3.942<4.027)のは飽和蒸気密度を下回り単相蒸気に入るため。右端 ρ=786 は圧縮液(亜臨界メタノール)で高圧。臨界温度(240℃)超の 300/340℃ は単相で密度とともに圧力上昇。実ツールはこの格子を相境界をまたがず補間して連続表示する。360/400℃ は347℃超の外挿域(参考値)。ρ=786は高温で液密度が低下して範囲外になりうる。

3. 物理モデル

4. 物性定数・グリッド仕様

流体 / CASメタノール / 67-56-1
状態方程式de Reuck & Craven 1993(IUPAC Tables vol.12), CoolProp 7.2.0 実装
臨界点T_c = 240.230 ℃ / P_c = 8.2159 MPa / ρ_c = 281.496 kg/m³
室温密度 ρ_room786.327 kg/m³(25℃, 1atm)/ 791.012(20℃)
EOS妥当範囲T: 175.61–620 K(=−97.5〜346.85℃)/ p ≤ 800 MPa
温度軸25–400 ℃、1℃刻み+Tc近傍を0.1℃に密化(347℃超は外挿・参考)
密度軸1–800 kg/m³、非一様(1–50:1 / 50–250:5 / 250–600:2.5 / 600–800:1)(430点)

5. 温度範囲の根拠

メタノールの参照式は妥当上限が 620 K(346.85℃)と低く、超えると外挿になる。一方、HEOS の外挿は 400℃まで数値的に滑らか(傾き≈0.10 MPa/℃で連続)であり、「分解しなければこうなる」参考値として実用的な要望がある。そこで 400℃まで拡張し、347℃超は外挿・参考値として明示する(UIに警告表示・グラフに破線+網掛け)。臨界温度 240℃ を大きく超えた 340–400℃ の延長部は全て単相(超臨界)。(参考:水版は IAPWS-95 が高温まで妥当なため 500℃ まで出せる。使える温度上限はEOSの適用範囲で決まる。)

347℃超の表示はあくまで参考値。メタノールは高温で熱分解(CH₃OH → CO + 2H₂ 等)しうるため、純成分平衡はこの温度帯では特に理想化された値。

6. 室温密度の選択(786 / 791)

室温密度は「室温で量った液量(mL)→質量」の換算係数。封入後は質量一定(等容)なので、入れた時点の密度だけ要り、高温での密度変化はEOSが担当。786=25℃実測、791=20℃(メタノールは温まると膨張=低密度化)。実際の測定温度に合わせて選べる(「1.000」のキリ番が無いので20/25℃の2択)。この選択は物性グリッドに無関係=再計算不要で表示値のみ即更新。

7. 妥当性(検証)

8. 限界

表示は純メタノール成分のみの平衡圧。初期ヘッドスペース気体・反応/分解生成ガス・容器熱膨張・溶質や木材由来成分は含まない=総圧でも安全設計値でもない。メタノールは可燃・毒性・高温で熱分解。

347℃超(EOS外挿域)は参照式の妥当範囲外の外挿値。特に高温では熱分解(CH₃OH → CO + 2H₂ 等)の影響が実圧に大きく影響する。ツール表示は「分解しなければこうなる」理想値として参考のみ。

臨界点(240℃)近傍±3℃の相・気液量は参考値。設計用途には安全率と実ガス分を別途見込むこと。データ範囲 T=25–400℃(347℃超は外挿),ρ=1–800 kg/m³。

9. Q&A

質問回答
何で圧力を計算?等容系の仮定で、温度と全体密度を状態方程式(CoolProp/メタノールHEOS)に入力。二相域は飽和蒸気圧。
充填量から何を出す?室温密度をかけて質量に直し、容器体積で割って全体密度 ρ。これが状態を決める。
水と何が違う?臨界点が低い(240℃/8.2MPa vs 374℃/22MPa)。200℃台で早く超臨界へ。EOSの妥当上限も低い(347℃。400℃まで表示するが347℃超は外挿)。
精度は?CoolProp直接計算を参照値に補間誤差を検証。操作域 p95≈0.037%、最悪でも臨界直下の希薄蒸気で≈0.23%。EOSの絶対精度ではなく実装の補間精度。
なぜ約15万点も?相境界付近や圧縮液域・臨界近傍は圧力が急変するため、密な格子で補間誤差を抑えるため(臨界直下は0.1℃刻み)。
安全設計に使える?不可。純成分平衡圧であり、反応・分解ガス・溶質を含む総圧ではない。

10. 参考文献・リンク